外国切手研究会 第13回Zoom例会レポート

2020718日 2000PM – 22:25PM開催『外国切手研究会 第13Zoom例会』のレポートです。参加者13人中7人の発表で質疑応答が有りました。

1人目)前回発表のあった英領ヘルゴランド島切手について詳しい解説、伝統的にドイツの島で、1814年ナポレオン戦争で英国所有に、1890年にヘルゴランド=ザンジバル条約で交換されドイツ帝国領となる、第2次世界大戦で英国に爆撃されドイツ軍は撤退、1952年に当時の西ドイツに返還される、ミッヘルではジャーマンスティツの扱いだが、1867-1890年に英領として19種の切手が発行された。

英領ヘルゴランド島切手の特徴として、ジュリアスゴルドナーというハンブルグ19世紀の切手商(現代のお土産屋さんのような感じと思われる)が1875年ヘリゴランド郵政より当時使われなくなっていた切手をお土産として販売する為、オリジナルを製造したベルリンの印刷所で同一原版を用いてリプリントを製造買取した、後には印刷原版を買取り自身で発注製造が続けられた、1880年代には使用停止になった低額切手の印刷原版も買取り、さらには既に使われなくなっていたヘリゴランド郵便局初期の消印も買取り、リプリント販売と共に過去の日付に遡った押印サービスも行っていた。

以上のような経緯からこれらの切手には、1)オリジナル切手の未使用、2)オリジナル切手の本物の使用済とカバー、3)オリジナル切手の偽消しとカバー、4)リプリントの未使用、5)リプリントの偽消しとカバー、が存在する事になりそれらの判別が必要になる。

但し19種類の内リプリントされたのは12種類であり、リプリントされなかった7種類の未使用について判別は比較的容易である。リプリントは3箇所で印刷製造され、ベルリンリプリント、ライプチヒリプリント、シュロットケリプリントが存在する、それぞれに特徴が有り本物とこれらリプリントとの判別は可能である、専門家は未使用についてはシェードを重視して分類しているとの事。

使用済みに関しては本物と偽消しの判別は非常に難しく、使用済みやカバーは鑑定書付きでないと購入を躊躇う物も多い。

英領ヘルゴランド島切手に関しては、以下のリンクより御本人が作品形式で分かりやすく詳しい解説をされています、是非御参照下さい。

http://www.stampedia.net/stamp/exhibition/207/ja

 

2人目)モザンピーク官製ハガキの使用例、ロランスマルコス印、近隣都市トランスバールダーバン行、前回他の方の紹介されたハガキ同様表に着印が押されている、この辺りこの時期はそれが普通だったのかもしれない、要検証。

ネパール切手とチベット切手の混貼カバーについて、裏面にもネパール切手貼、ネパール切手はセカンドシリーズの切手だがこのシリーズは目打有の為、表面の4アンナ切手は無目打エラー?裏面の2アンナ切手は本来の色はブラウンの為刷色エラー?と思われるとの事、1949年ネパールラリトプール発チベットパリジャン?行、非常に興味深いカバーだが発表者参加者共にカバーの詳細は分からず、是非有識者の見解をお待ちしております。

3人目)前回モザンピークカンパニー切手の続報、モザンピークカンパニーの切手の消印は首都ベイラーしか無いのでは?と発表したが、幾つか他局の消印が見つかった為追加発表、1つ目)像が向き合う紋章シリーズに押された1906年3月18日マロメウ消(ベイラーより北の都市)、2つ目)同国官製ハガキに1906年4月6日マセゲウス消ドイツクランペンゲルグ同年4月30日転送ヘルシンガー行同年51日着、当時の官製ハガキは表面に写真やイラストが印刷されている物が多くて興味深い。

次の20レイス官製ハガキは1904619日ベイラー消だが、15レイス切手が加貼されたドイツ行、表面にポルトガル本国の王宮が描かれている、上部に経由地も手書され左側にドイツ東アフリカラインの消印が押されて航路等も推測出来る為、一枚のハガキから多くの情報を楽しめる。

前回他の方より発表のハワイ王国1862年発行数字切手2セント(スコットNo.16)オンピース切手について画像よりプレートが判明した様、この切手はプレート3-C、タイプ8、ポジション8、ホノルル消、専門家の氏によると外枠の各コーナーギャップ等から調べる事が出きたとの事。

現在スペインの切手商で8月迄の期限で即売されているスイス不足料切手ファーストシリーズが貼られているカバーを3通紹介、ドイツ発が2通アメリカ発が1通で共に例会参加者の収集範囲の為、興味あるマテリアルとの事。

前回に続きハワイ王国クラッシックコレクションより、1864年発行数字切手2セント(スコットNo.2420枚シート専門コレクションを紹介、この切手はシートを真ん中で分割された10枚単位になっている物が普通で(無論それらも希少)、このように20枚シートで残されている物は大変少なく今迄2点しか存在が確認されていなかった、その内の1点は有名な収集家フエラーリがかって所有していた物、今回発表の3点目は最近発表されて購入したとの事、他にスコットNo.25切手も20枚シート(現存4点)をお持ちとの事で、福眼ながらハワイ王国切手コレクションは是非リアル例会でも拝見させて頂きたいと多くの声が上がりました。

4人目)前々回発表のマルタ騎士団に続き、領土を持たない切手発行体に色々と興味を持った事からポーランド亡命政府の切手についての郵趣書籍を注文したとの事、1939年ドイツの侵攻によりポーランドは陥落してしまうがポーランド海軍は逃げおうせ、最終的にイギリスロンドンで樹立した亡命政府は切手を発行した、イギリスの主権を犯さない様ポーランド船籍の軍艦や商船で運ぶ郵便物で実際に使用された切手との事で、その宛先はイギリス他に友好的な国や中立的な国との事、未使用切手は比較的残されており、インターネットオークションで見かけるカバーの大半もフィラテリックな物だが書籍が到着次第勉強したいとの事、コメントとしてこの書籍は第一人者が書かれた非常に良い物とのアドバイス。

5人目)アメリカ普通切手1870年シリーズコレクションの紹介、1869年シリーズは不人気で1年余りしか製造されなかったがこのシリーズは約20年に渡り製造された、1リーフ目はプレートプルーフやカラートライアルプルーフ、再彫刻等のブロックを整理した物、2リーフ目1セントフランクリンで印刷物や市内郵便用の切手を分類したもの、製造会社が初期はナショナルバンクノート社、中期はコンチネンタルバンクノート社、後期はアメリカンバンクノート社製造に分けられる、初期のものにはグリルという消印を消去しにくくなるよう紙に凹凸の加工をされた物も有る、それぞれの原版は引継がれたがコンチネンタルバンクノート社やアメリカンバンクノート社はそれぞれシークレットマークを入れて印刷製造した事と用紙の違いでそれぞれ分類が可能、消印やシェード、紙質の違い等で分類を楽しめる、3リーフ目3セントワシントンは書状基本料金の切手で1セントの分類とほぼ同じ3社で印刷製造された、この切手は10億枚以上発行されたので貫禄が有るにも関わらず使用済は安価で楽しめる。

蛇足として以前このシリーズをJAPEX切手展に出品した時、構成方針が当時の日本の小判切手的な展開だと審査員よりアドバイスを頂いた事も有ったが、その後特に変更はしていないとの事です、コメントとして自分で楽しむには良いのでは、又消印が同年代の日本の小判切手に押されているのに近い物が多く面白く、過去の郵趣の裏表紙(19811月号と判明)にも両国の使用済切手が取り上げられた事も有り懐かしいと。

6人目)旧中国切手、40分貼1933216日上海発ドイツハンブルグ行重量便パックボーカバーについて、コンテブェルデという船籍がカバーに手書きされ消印のC欄も同じくコンテブェルデだが、A欄がロイドトリエスティーノという船を所有している社名になっている面白い物、このコンテブェルデという船は日本にも深く関わっており、1932年極東航路に就任したが1937年香港で台風により走錨に合い日本郵船の浅間丸と接触事故を起こし座礁してしまう、修理完了後航路に復帰するが1940年頃欧州で戦争が始まった為に帰れなくなる、上海にそのまま停泊していた所旧日本軍が目を付け前記の浅間丸と共に難民交換船としてロレンスマルケス迄1度だけ航海する、その後再び上海で停泊していた所又も旧日本軍が目を付け、輸送船として利用する為に寿丸と改名改装したが1944年頃空襲により沈没、戦後引き揚げられスクラップなる運命を辿った船舶。

当時の上海の新聞によるとロイドトリエスティーノ社の告知が有り、その欧州航路郵便の告知と宣伝を見た差出人がこのカバーを作ったのではないかと思われるとの事。

7人目)前回紹介の蘭印カバーについて自分で調べた仮の結論、19331227日バタビア(オランダ領東インド)発アムステルダム(本国)行の「ペリカン」(アムステルダムバタビア路線で使われたオランダ航空使用の旅客機の名称)に搭載された特別新年フライトカバーでは?でもオランダでは新年よりクリスマスを重視するのでは?とさらに調べた所、193312月「ペリカン」がバタビアへの特別なクリスマスメール飛行に使用され往復完了された記事を見つけた事から「特別クリスマスフライトカバーの復路」ではないか?

郵便料金に関して、オランダ領東インド発本国行封書=30c+12 1/2c=航空料金+封書料金と仮定、ネット上で色々なキーワードを使いカバーの画像を検索した所、全く同じ料金形態のカバーは見つからなかったがebayで同年代同路線のカバーを検索した所同様の物が5通程見つかった、料金の高いカバーも見つけたが重量便ではないかと、引き続き機会があれば調べて行きたい。

某オークションで最近落札した、ドイツ1920-1948年使用済み2000枚パケットについて、長期間楽しめると思い購入、細かい分類はまだ初めてないがアドバイスやヒントが有れば欲しい。

アドバイスその1)この時期のドイツ切手は色々な国が混じっている為先ずはそこを分類する必要が有る、画像から見る限り本国、占領地、戦後フレンチゾーン、前後ソビエトゾーン、ボヘミアモラビア、ウクライナ、ヒトラー切手でも加刷による占領地切手等々、その2)ドイツは物が豊富に有る上カバーも安い為ここも楽しめる、その3)分類にはやはりミッヘルカタログが必要だが、専門カタログ、スタンダードカタログ、ジュニアカタログの3種類が有る、ジュニアカタログとは日本のさくらカタログの様な物でありアマゾンでも安価で購入可能、その4)この時期の特徴として、本国や占領地等国名表記がそれぞれ違う為、カタログを使わなくても大きな分類が可能との事。

1人目その2)現在開催中の某オークション、2020年夏の文献セールにミッヘルジュニアカタログが出品されています、参考にして下さいとの事です。

亡命政府切手の話題として、少し前第13回某オークションに1915年発行ベルギー亡命政府のカバーが出品落札されていたとの事、こちらも参考にして下さいとの事です。

以上です。今回も熱気の有る発表ばかりでした。又ネパールチベット混貼りカバーについては是非有識者の見解をお待ちしております。詳細は下記画像をクリックして頂ければ大きな画像で見て頂く事ができます例会内容に興味が有る方や御質問等有る方、些細な事でも結構ですのでコメントをお待ちしております。