2020年8月8日 20:00PM – 22:10PM開催『外国切手研究会 第16回Zoom例会』のレポートです。参加者12人中7人の発表で質疑応答が有りました。
1人目)イギリス2ペンスブルーコレクションの紹介、知名度や人気は1ペニーブラックの方が高いが、英国及びその関連地全般を収集している中でもトップクラスに好きな切手との事、ペニーブラックは12版及び修正版も有るがこちらは2版しか無く製造面のバラエティは少ない、発行枚数は約640万枚でペニーブラックが約6800万枚と約1/10で入手はそれなりに難しくなっている、特に未使用切手は単片でも相場は約100万円と高価、紹介の未使用ペアは約40年前にそれなりの金額を叩いて購入したもので以降は未入手。
ペンスブルーは青色の印刷が不安定だった為かシエードの分類が多く楽しめる、同時に発行されたマルレディーカバーもそうだが、初期に使用された濃い赤色のマルタ十字印使用例は少ない、ペニーブラックがレッドペニーに変わった後でもこちらは使い続けられたようで、後期使用例と言える黒色のマルタ十字印や日付入り印もよく見かけるが、個人的にペンスブルーは赤色のマルタ十字印で揃えて行きたいとの事。
本日は不参加だが、最近の例会でアメリカクラッシックを発表されている方のコレクションをJAPEX切手展で拝見して刺激を受け、自分のコレクションを3年程掛けて再整理し、昨年のアルプスヨーロッパ切手展にビクトリア女王時代の切手として出品した中のワンリーフとの事です。
消印に関する質問その1)赤と黒以外の抹消印が使われた使用例が有るがその辺はどうか(色々な報告は有るが当時は抹消印と日付印の色が違っており、黒の代わりに青のインクを使っている局も有った、それらの朱肉を間違えたり混ざったりして使った為に発生した可能性も高く余りそこは追求していない)、その2)マルタ十字印は全て手彫りとの事だがその印影から使用局は分かるのか(全て判別可能で専門カタログに記載が有る)、その3)なぜ抹消印としてマルタ十字印が選ばれたのか、少し前に話の有ったマルタ騎士団と何か関係が有るのか(有り色々な諸説が有るが、本国でも結論は出ていない)。
2人目)自分のコレクションから朝鮮関係のカバーで詳細が分からず例会でヒントが欲しくて紹介、1通目は1905年ドイツ発ロンドン経由朝鮮ソウル行ゲルマニア切手貼カバー、T文字の不足料印が押されている、韓国京城印が押された長崎廻しの付箋が貼られている、訪ね当たらずの意味が日本語とフランス語で表された朱印が押されている、ドイツ語のZURÜCK(バック)印が押されている、長崎でDUEの文字が入った朱印が押されている、SEOULのI.J.P.O欧文印が押されいる、など情報は非常に豊富。
参加者の意見を整理すると、ドイツはUPUに1875年7月1日当初から参加しており、1905年当時の外信船便基本料金は20ペニヒなので10ペニヒ不足、ドイツでTの不足印が押され、以前紹介の仮想通貨UPUフランに換算された不足金額がUPUルールの青色文字で書き込まれれる、付箋の下には恐らく不足料金に対し、当時の規則である不足金額の2倍の徴収料金20の数字が青文字で書き込まれており、今回はUPUフランとペニヒ通貨と銭通貨が偶々同じ比率だった様、これらUPUルールの運用はフィラテリストマガジン13号で山本勉氏が詳しく解説されておられるので是非参考にして下さい。
ちなみにこれら多くの国際郵便料金を詳しく解説した書籍として、MICHEL Internationales Taschenbuch der Postgebuhrenというカタログがミッヘルより安価で販売されていますとの事、下記にリンクを貼っておきます。
2通目は1901年発菊ハガキに菊切手を加貼した朝鮮NINSEN(仁川)発ドイツベルリン行ハガキ、左下に押されているドイツで押された印鑑が詳しく分からない、どうも地名や局名ではなく郵便局番号が押された印鑑らしと迄は判ったがそれ以上は詳しく分からない。
今回の2通は昨年のJAPEXに朝鮮の消印という作品を出品したが、アメリカで今年8月17日から22日に完全にバーチャルな切手展スタンプショウが開催されるので、朝鮮の欧文印ワンフレーム作品を出品しようと整理していた所、ドイツ関係で詳しく分からないマテリアルが出てきたので発表させて頂きましたとの事、またこのバーチャル切手展は登録無料でネット上で色々な会合や公演も開かれるそうなので紹介させて頂きますとの事です。
3人目)チャイナクリッパー最新号より、中国発行COVID19切手の紹介記事について、色々と話題の多かった切手だが細かく説明されている事も有り、カタログにも掲載されるだろうとの事。
中国北京発スイスチューリッヒ行カバーについて、1946年5月は中国の郵便史的には非常に面白い時期で、5月1日より海外宛の通常封書料金が30円から190円に値上げされたが航空料金は50円のままで、通常封書料金より航空料金の方が安い期間が5月1日より5月20日迄の19日間程存在した、5月20日からは航空料金も300円となった。
この時期のカバーの存在は決して少なくはないが190円という中途半端な料金のせいか過貼されているものが多く、約半分はそのような使用例でその内又半分は切手が裏面貼り、料金が正しく貼られて表に切手が貼られていて満足出来るるカバーは少なくてこれもその様な物、しかしながらこのカバーのポイントは表面で、以前他の方が発表したカバーと同様、スイスに到着後特別に早く配達する為の手続きがなされその料金を不足料切手で徴収されたカバーと思われる。
ただ今回紹介のカバーは1946年だが45サンチーム、以前紹介された方のカバーは1952年だが25サンチームの不足料切手で徴収されており、その違いは詳しく分からないとの事。
4人目)ドイツ民間郵便会社タクシスの切手について、今回は1852年から1858年発行の1番シリーズを紹介、このタクシスは広範囲な飛び飛びのエリアを受け持っていたが切手発行当時、北部と南部では通貨単位が違っており、2種類の額面で色が同じ物同士ほぼ同一貨幣価値の切手が発行されている、北部用は額面を四角、南部用は額面を円形で囲んだデザイン、4種類の額面で切手が発行されたが他のジャーマンスティツもほぼ同様で3種類か4種類、ローカルレター、第1地帯、第2地帯、第3地帯の額面となっているそうです、1853年に第1地帯用の青色が濃すぎて額面や消印が判りにくいという理由から明るい青色に変更されて発行、1854年に北部ローカルレター用新額面、1857年に北部印刷物用新額面が発行されて計12種類。
全体的に未使用は難しくペアやブロックはかなり難しい切手が有る、製造期間の短い第1地帯用初期の濃い青色の切手は特に難しい、最後に発行された北部印刷物用切手も同様で難しい、使用済やカバーは未使用に比べると入手しやすいが大きなブロックやマルチプルは比較的難しい、南部用切手に比べると北部用切手の方が入手は若干難しいそうです、発表された全リーフを可能な限り紹介しますので参考にして下さい。
5人目)最近例会で話題になっているヘリゴランドが気になり、西ドイツ1972年観光シリーズヘリゴランドのFDCを入手したが、そのカシエが1940年発行ヘリゴランド帰属50周年の図案と同じ事に気が付いた、この切手が以前購入したドイツ2000枚パケットに入ってないか期待、最後はヘリゴランドリプリント切手を入手して大名刺のワンリーフを作れないか検討中との事。
最近購入したアジアとアフリカ諸国のロットについてアドバイスが欲しい、分類整理の途中だが比較的色々な国と年代の切手が入っており、アジア植民地等詳しくない地域も多い、これから発展させて行けそうな物が入っているか、有る程度整理して終わってしまいそうな物か分からない。
アドバイスその1)先ずは国単位で整理して足りない所や欠けている部分を調べてみる、そこの穴埋めやバラェティを入手整理して行けば素晴らしいカタログコレクションにはなると思いますとの事。
アドバイスその2)ゼネラルコレクションと専門コレクション両方をやっている上でのアドバイスとして、1840年から2005年迄で世界の切手発行枚数は約50万種類、ゼネラルの基本的な考えは1種類でも多く集めるのが目的で深い分類や発展等を目標にするのでは無いと思います、専門コレクションの考え方を個人的意見で述べると、1980年位迄の切手なら国際展レベルの作品作りは可能と思いますし、50万種の中から自分が気になったり気に入ったシリーズを選び深く追求するのが専門コレクションで、今回購入されたロットの中にそういった切手やシリーズがあれば、それがどんな国でも何らかのアドバイスが出来ると思いますとの事。
6人目)最近eBayで出品されていた偽物について、現在中国とロシア関係を収集しているが、内蒙古・張家口(カルガン)発の私製ハガキを見つけた、ロシア局の中でも非常に難しい物で兎に角入札をしたが締切直前によくカバーを見ていると2つ押されている中国の消印が上海5月9日、騰越5月16日と有りえない日数関係に気が付いた、騰越はビルマ国境近くの町で当時の国内逓送だと2ヶ月近く掛かり、海外逓送路を使うしかないルートで、上海 → 香港 → シンガポール → ラングーン → バーモ → 騰越と一週間では不可能、更に詳しく調べた所全く同じ日付の物が英国の有名コレクターが発表した論文の中に有り、見比べて見ると所々おかしな点に気が付き入札を取消して安心していた所、以前この出品者から2点落札していた事に気が付いた。
中国・雲南奥地からビルマルートのフランス行私製ハガキだが、同様のカバーは所有しているのでハガキ使用例も欲しいと思い入札するも落札出来なかったが、出品者から同じ日付のハガキ使用例が有るので購入しないか?というセカンドオファーを受けた、自分は2番手では無いと思ったが、比較的値段も安く思えたので購入したが、先の出品者と気が付いたのでよく調べてみると、こちらも全く同じ日付の本物カバーを見つけた、中国局の消印だけ調べたがやはり所々おかしな点が有り偽物を購入してしまったと確定した、eBayは90日で記録が消されるが、PayPalは180日間記録が残るのでそこから調べてクレームを強く入れると返金された、もう一点は90日以内だったのでeBay自体のクレーム対応から申し出ると此方も暫くして返金された。
注意点として本物の当時のハガキに本物の切手を貼り、著名なコレクションやオークション出品物を参考にした偽物の消印が押されている事で、その日付は本物と同一年月日である事が多い、欧米人ではなくアジア系の人が書いたと思われる上書きも特徴である、最近の複製技術の向上も有りこういったカバーやハガキが多数出品されていると思われるので注意して下さいとの事です。
7人目)前回発表のハワイ王国クラッシック数字切手のブロック(シート)の解説の補足、前回発表後も引き続き色々調べた所、幾つか有る数字切手の著書からウエスタバーグ氏の解説で、当時の印刷機の画像や(スコットNo.22)5セント切手の50枚シートの画像があり、この切手は30枚と20枚の印刷組合せだった可能性があるとの事、10枚単位のポジションが判別しており通常なら偶数パターンのテートベッシュが出来るが、印刷版の組合せによっては奇数パターンのテートベッシュも有り得るらしいが、5セントに関しては前回紹介の物が現存1点の為未確認である、又同著書で(スコットNo.23)1セントの説明文で印刷シート構成は40枚又は50枚と記されており、かってホノルルアドバイザーコレクションが所有していたテートベッシュも40枚シートとして説明されている、実際の印刷シートがどちらだったかは50枚シートの形では現存していない為不明。
同じく同書から(スコットNo.13)2セントの図版で、これもホノルルアドバイザーコレクションがかって所有していた物、左右で明らかな位置ずれと印刷色の違いが有り、同一シート中に別々のプレートが混在しているハイブリット版ではないかとの疑問点が有り研究余地はまだ有るが、これほど印刷位置ずれが有るものは他には無い、(スコットNo.15)1セントにもプレートが混在しているものが一点のみ確認されているがこれほど印刷位置がずれている訳では無い。
ハワイ数字切手でテートベッシュが存在するのは5点で其の内4点を所有しており紹介、(スコットNo.15)1セントで旧石川良平コレクション、(スコットNo.22)5セント、(スコットNo.23)1セント、(スコットNo.24)2セント、所有していないのは(スコットNo.21)5セントだが非常に数が少なく入手は難しいとの事です。
今回は以上です。詳細は下記画像をクリックして頂ければ大きな画像で見て頂く事ができます。例会内容に興味が有る方や御質問等有る方、些細な事でも結構ですのでコメントをお待ちしております。