2020年8月1日 20:00PM – 22:00PM開催『外国切手研究会 第15回Zoom例会』のレポートです。参加者11人中6人の発表で質疑応答が有りました。
1人目)前々回発表のハワイ王国クラッシック数字切手の続編、現存確認されている20枚以上のブロック(シート)の解説、1点目1865年発行5セント(スコットNo.22)25枚シートで現存1点の旧ホノルルアドバイザイーコレクション、 右側5枚分がテートベッシュになっている物で左側20枚、右側20枚計40枚で印刷した物を10枚の4点に分割されているのが普通でこの様な状態で残されている物は非常に少ない、テートベッシュが発生した理由として40枚シートの印刷時、最初は半分の20枚を印刷した後、紙を180度回転させて残り20枚を印刷した為と言われているが全ての数字切手(メインナンバーで15種)にテートベッシュが有るのでは無く、当時の印刷時技術や状況、環境等でそれらが発生したと言われている、1996年時でのオークション落札価格は10万5千ドルとの事ですが現所有者は不明。
2点目発表者の所有品で1865年発行1セント(スコットNo.25)20枚シート、収集家デビット・ゴールデン氏がかって3シート所有していた物で現存5シートの中の1点。
3点目1865年発行2セント(スコットNo.26)20枚シートで現存1点、これもデビット・ゴールデン氏が所有していた物、印刷単位の10枚ブロックで左右を見比べた時、右ブロックのポジション1とポジション9共に左側の文字(INTERISLAND)が欠けているバラェテイとなっている、数字切手は現地印刷のタイプセットで現存シートが少なく当時の状況が詳しく分かっていない為に発生理由は分からないとの事、現存数としては文字が欠けている切手の方が多いかもしれないがオークション価格やはりこちらが高くなる様、又ポジション10も額面数字が欠けた定常変種。
前々回紹介の1864年2セント(スコットNo.24)と合わせた4種類が20枚以のシートが現存している数字切手のとの事です。
ポルトガル1912年発行セレス普通切手コレクションの紹介、ゼネラル収集時のリーフだが完集は中々難しい、2リーフ目、3リーフ目はハガキ使用例の紹介、このシリーズは紙の分類や目打、シェードバラェテイも有り楽しめるが大半の値段は安価との事、それ故にオークションにも余り出でこない為入手は逆に難しい、このシリーズで切手展出品を考えた場合、どういった方向が考えられるかという質問に対し、シリーズ全体が大きくどこかで区分をして収集出品をするのも一つの方法という回答で本国では専門カタログもある、又このシリーズを日本切手に当てはめた場合、田沢切手に該当するので日本でそれらを国際展に出品されている方の作品を参考にするのも良いのではというアドバイスが有りました。
2人目)旧中国切手初期コレクション、1リーフ目は大龍切手のバラェテイを紹介、この9種を揃えるのは非常に難しく特に3段目の厚紙は難関ですとのコメントが有りました、25枚シートの画像は発表者の所有ではないがプルーフと思われ他に4枚シートのプルーフも有る様、2リーフ目は次に発行された小龍切手、この切手は水剥がしをすると印刷面が崩れてしまう為状態の良い使用済は非常に少なく、紹介者のコレクションはかなり状態の良い方と思われる、3リーフ目はチベット(西蔵)加刷切手の紹介、1911年発行のこれらは1912年に消滅した旧中国(清)の末期に発行された為に現存数は少なく、全部を揃えるのに10年以上かかったとの事、切手自体は台切手加刷共ロンドン製との情報。
3人目)イギリススタンプレスカバーの紹介、安価で状態も良かった為最近購入したが専門外の為情報が欲しいとの事、封筒上部 ”On・Her・Majesty’s・Service” の書込と消印から1871年エジンバラ発の公用便迄は判明、本日例会はイギリス関係に詳しい方が居られない為これ以上の事は分かりませんでした。
同じくイギリス関連で、1971年イギリス郵政のストライキ時に民間業者が発行したストライキ切手カバーの紹介、1通目は封筒の表と裏に世界の有名人図案8枚セット?の切手を貼ったオランダ行FDC、2通目は日本の1969年切手趣味週間「髪」を図案に用いたフランス経由日本行航空便カバー、この時代イギリスのストライキは数ヶ月にも及ぶ事もあり、このような切手を製造発行したのは数社有るとの事だが、写真のカバーに貼られている切手は図案の選定からアラブ土侯国切手を彷彿させるもので、収集家向けの発行がメインの目的だったと思われる、無論国際郵便には使えない為に奇妙な感じのコンビネーションカバー風となっている。
特に2通目のカバーは「日本向けエアメール」と図案に描かれた5シリング額面のストライキ切手を貼って作成されたカバーをフランスに持ち込み、同国の切手を貼って日本に向けた実逓便で受取人は東京のMr Hiroshi Wada となっている、当時の切手商かブローカーと思われるが日本人向けに双方の業者が手を組んで作成したと考えられ、本来の目的とは大きく違って発行された切手である。
前回の某オークションにイギリス1971年ストライキ切手コレクションが出品落札されており、その落札者の方が次回例会に発表して頂けるとの事です、又これらの切手を日本で販売する為の切手商が有ったはず、調べて見てはとの事で検索した所「郵趣」1971年9月号の広告を1件発見しました。
4人目)ヨーロッパ・日本間のイタリア・ブリンテッシ経由カバーに関する話について、1通目はG・BOLMIDAの差出人印が押され旧小判切手が貼られた1877年9月横浜発フランス行でUPU加盟初期のカバーで10銭は当時の主な向け基本料金、2通目は1880年6月17日横浜発フランス行カバーだが10銭+2銭=計12銭が貼られた料金からブリンテッシ経由と推察されるが実際にそのルートで逓送されたかは現時点では確証出来ていない。
3通目が今回の本命でスイス発横浜行、1874年12月16日バーセル消でヨーロッパでもまだUPUは成立していない時期のカバー、逓送ルートとしてはスイス→フランス→イタリア・ブリンテッシから船便で日本行、当地は19世紀中盤にスエズ運河が開通して以降はアジアとヨーロッパと結ぶ欧亜航路の発着地のひとつであった、当時のブリンテッシは既にイタリア北部からの鉄道も開通しており陸地内速達扱いと思われる、ヨーロッパ・日本間での郵便史を最近初めており、それらの収集品としてこれらを入手したとの事、なお日本のUPU加盟以前はフランス横浜局経由の有名な”デグロン君”カバーが有りそれらは非常に高価だが、逆パターンとしてブリンテッシ経由のカバーが有るのか無いのか等も調べて行きたいとの事。
ちなみにブリンテッシは現在それ程有名な都市でも無く、切手収集家以外には知名度は高く無いが実はPKOが使う物資集積基地その他も有る重要な都市との事、PKO活動の多くはアフリカで地理的な位置からではと思われます。
5人目)前回の続きで旧中国切手に押された”HMCG”という印について、購入予定だった書籍は業者から連絡が来ないのだが、時間差で自分のブログに同じ内容を上げた所、コメント欄より丁寧な答えを頂いたのだが、ひとつだけ気になる点が有ったので質問すると、十分納得の答えを再度頂きほぼ解決したとの事です、又この方以外からも情報を貰い、4年前に自分が購入したカバーが香港のオークションに出品されて不落札だった時の商品説明欄も教えて頂き、前所有者等の情報も分かったので購入予定だった書籍については無くても良いかなと思えるとの事。
2点目はメイン収集の孫文切手について、写真は最近国内オークションで購入した香港中華版で中華2版と呼ばれる2分切手銘版付8枚ブロック、櫛型と思われる目打だが少し気になる点が有り購入した、高額面の円切手はシート構成が違うが、分切手は同じで上部から一段ずつの櫛型目打と上下左右に抜ける単線目打が有る、最初に紹介した2分切手の櫛型目打に見える物だけ各コーナーを見ても櫛が抜けている面が見当たらず不思議との事、同じく2分切手で単線目打に見えるが左右に目打が抜けていないブロックも発見した、この2分切手だけがどの様な形で目打されたのか疑問との事です。
6人目)アメリカ普通切手1851年シリーズコレクションの紹介、前回紹介のファーストシリーズに続く2番目のシリーズとなる切手だが、基本料金が前納なら3セントと大幅な値下げとなり前シリーズに比べ発行枚数は大幅に増えた、1855年には前納が義務付けられ1857年には目打入りとなる、1リーフ目はエッセイのコレクションでスコット専門カタログによると7社のエッセイが有りその内4社のエッセイ、最下段のトッパン・カーペンター・カシリア社が競争落札して印刷製造した。
2リーフ目は1セントフランクリン無目打のコレクション、アメリカクラッシック切手としては非常に人気が有り”ブルー・フランクリン”の愛称で呼ばれる、プレーテイングが可能で専門カタログによると無目打と目打入り有合わせて12版だが1版はさらに前期後期に分けられる為13種類、印刷実用版は200枚シート、全部で13×200=2600のポジションが確定出来るとの事、ブルー・フランクリンに関してはタイプⅠが大珍品でその分類は主に図案上部の装飾で判別出来る、タイプとポジションに直接の関連は無く、転写時のトラブルやリカットされた印刷面等に現れる要因から確定するとの事。
3リーフ目は1セント無目打カバーの紹介で3枚貼りは書状基本料金、1枚貼りは市内便もしくは無封印刷物料金。
4リーフ目は1セント目打入りコレクションで1857年発行、当初イギリスから輸入した機械を用いた為アメリカ切手としては細かい15 1/2のピッチ、無目打では大珍品だったタイプⅠも目打入りではポピュラーとの事、ガッターが非常に狭い為目打ちを上手く入れる為に縦印面を少し削って出来たのがタイプⅤで無目打には無いタイプ。
5リーフ目は1セント目打入りカバーの紹介、3枚貼り書状基本料金、1枚貼り市内便、両カバー共に朱色の消印だが特に珍しいという訳では無く普通に使われていた思われる。
質問として、これらマージンの狭い切手はそれらが良いマテリアルは少ないと思われるが実情としてはどうかに対し、版の分類には特に上下の印刷面が分からないと難しい為、それらを重視して購入するべきとの回答、先のカバーにも出た疑問として、この切手に押されている消印の色が黒、青、朱色が確認出来るが特に評価や希少性等有りますかの問いに対し、アメリカはその辺りおおらかな感覚で使われて規定は特に無かったと思われるが詳細はハッキリしないとの回答、無目打切手の中に右マージンが広いのが1枚有るがこれはシートの右側のポジションでしょうかの問いですが、その通りですとの事、アメリカ初期は切手抹消印と日付印に分かれていたがいつ頃から日付印で抹消されるようになったかとの問いに対し、ファーストシリーズですでにその使われ方がされている使用例も有るので比較的早い時代からではと思われるとの事。
5人目その2)次回の例題として、1968年発行土侯国オーマン切手貼日本向けエアメールカバー、当時UPU未加入と思われるが無事到着しているように見える?受取人は当時の渋谷スタンプ?宿題です。
今回は以上です。イギリスのストライキ切手は盛り上りました、この件で他に情報をお持ちの方居られませんか、詳細は下記画像をクリックして頂ければ大きな画像で見て頂く事ができます。例会内容に興味が有る方や御質問等有る方、些細な事でも結構ですのでコメントをお待ちしております。