外国切手研究会 第28回Zoom例会レポート

20201031日 2000PM – 21:45PM開催『外国切手研究会 第28Zoom例会』レポートです。参加者10人中6人の発表で質疑応答が有りました。

1人目)前回からの続きで、セント・ヘレナ初期加刷切手カバーを紹介、187476日発、同年81日イギリス・リバプール着、ケープタウン経由ルートと思われるが、直通便だったのか別便でイギリスに向かったのかは不明、19世紀のカバーは比較的少ない。

アメリカの金融機関ウエルズ・ファーゴ社が当時の切手付封筒に印刷して、自社の運送業便に使用していたカバーの紹介、封筒の記載から現金書留として使用されたと思われる、ウエルズ・ファーゴ社の創立者と他2人で設立したのがアメリカン・エキスプレス社で、当初は宅配便業からスタート、後に金融業に進出した。

カナダのオークションで発見した、インド地図シリーズの目打ズレエラー切手を紹介、現在100カナダドルが付いているが、アンダービッと可能なオークションとの事です。

2人目)最近入手のカバー等について紹介と質問、1点目はドイツ・ベルリン強制付加切手のカバー、書留便は分かるが、受人の住所名前が文面と思えるほど長い、裏面は差出人住所氏名なのか等々?

質疑応答から、書留ラベルやカバーの鉛筆書き、表面に書かれている固有名詞の多さから、複数の受人氏名が書かれているのではと、長い宛先のカバーの最初の単語、Kriegsgefangene はドイツ語で「戦争捕虜」との事です、戦後西ドイツのカバー故に色々分かると興味が出てきますね。

2点目は、3ヶ国の同一図案切手を貼ったリーフレット、ヨーロッパ越境地域連携組織との事だが、詳細は調べている途中との事で、まずは紹介のみ。

訂正と追加)前回の第2回例会、ドイツのアメリカ・イギリス・ソビエト占領地区共同発行、1947年労働者図案シリーズ切手カバーのレポートですが、不足料金の解釈が間違えていたようで、詳しいコメントを頂きましたので訂正と紹介をさせて頂きます、ありがとうございました。

差出地、あて先ともにバイエルンなのでアメリカ占領下=西ドイツ。西ドイツ地区では1948年6月21日に通貨改革を行いました。料金が10倍になったのです(価値が10分の1になったとも言えます)

そして、旧通貨の切手にラッパ加刷をした切手を発行しました(=この切手は従来の10倍の価値がある)。しかし、旧切手が直ちに無効になったのではなく、西ドイツにおいては6月21日と22日の2日間のみ旧切手も使えました(西ベルリンでは期間が異なる)。ただし、それまでの10倍分を貼る必要があります。

このカバーの例で言うと、6月21日か22日に差立てる場合、旧切手(=ラッパ加刷の無い切手)ならば、240pf分貼る必要があったのです。ところが、あなたのカバーには6月21日に24pf切手1枚しか貼られていませんから、240pf – 24pf = 216pf不足です(pfで言うと21.6pf不足)

当時の未納不足便の扱いは未納不足額×1.5倍し、5pf単位に切り上げることになっています(最低額は10pf)。だから、21.6pf × 1.5 = 32.4pf → 33pfとしたのでしょう。

ミッヘルカタログの記述の範囲では5pf単位で切り上げますから35pfにするべきですが、33pfのまま受取人から徴収したようです。もしかすると通貨改革時の特例で5pfの切上げをしない取り扱いだったのかもしれませんが、今、そこまでは調べていません。とても面白いカバーですので、大事にしてください。

なお、消印の時刻が見えませんが、もし6月20日の夜に投函して、21日の初開函便(たいてい午前10時まで)であれば24pf切手がそのまま有効です。したがって、21日といっても時刻もよく見なければなりません。

蛇足ですが、ドイツでは青の色鉛筆による数字は受取人が支払うべき額を意味します。プロイセンが1850年11月15日に最初の切手を発行するに際して、その発行告示にその旨明記したのが最初です。その後、ドイツではこれが習慣となっています。なんでもない数字ですが、それなりの規定に基づくのです。

3人目)アメリカ・ニューヨークの郵趣団体、コレクターズクラブで開催されるオンライン切手展の紹介、ワンフレーム切手展ですがレベルの高い作品が多数出品されているようです、本来なら誰でも見る事が出来るHPなのですが、レポーターの環境からはうまくアクセス出来なかった為、紹介者からの画像を一部掲載させて頂きます。

https://collectorsclub.org

4人目)アメリカ1869年ピクトリアルシリーズシリーズ後半の紹介、6セントから90セント迄の7種類だが、製造面の変化が殆ど無くコレクション展開に苦労させられるとの事。

6セント・ワシントンは国内封書の2倍重量便用途やカナダ宛基本料金、187011日からは英国宛基本料金にも相当。

10セント・鷲はフランス、ドイツ、中国、日本宛基本料金などに相当、在日外国局 HIOGO では抹消専用の小型二重丸印が使われ、在日外国局の中では比較的見つけやすいとの事です。

12セント・アドリアチック号は1869年末迄のイギリス、アイルランド宛基本料金に相当。

6セントカバーは1870513日イギリス・ロンドン宛、10セントカバーはフランス・フィニステール宛。

このシリーズ高額面はアメリカ切手発の凹版2色刷で、中央部の逆刷エラーも一部確認されているがその数は少なく非常に高価。

15セント・コロンブスの上陸はタイプⅠとⅡが有り、色ズレを目立たなくする為早い段階でタイプⅡに変更された為タイプⅠの割合は約1/10と少ない、24セント・独立宣言、30セント・鷲と国旗はこのシリーズの中でも美しい切手と言われ人気がある、90セント・リンカーン。

12セントカバーは1869519日イギリス・ロンドン宛、15セントカバーはフランス・パリ宛。

参考資料として、90セントで知られている唯一のカバー、当時のオークション落札価格は375千ドル。

5人目)インド・1957-58年地図シリーズ続編、印刷漏れエラーシート、多数貼りカバー、書留使用カバー等を紹介、今後の切手展出品に向けての研究やマテリアル選定、ポイント等を紹介、エッセイやプルーフの存在も確認済との事。

6人目)メインの収集範囲、中華民国・孫文切手を収集する中、興味も有り必要でも有る貨幣事情を調べていたが、以前からの所有品と最近入手した有益な文献を5冊紹介、ネットオークションで安価に入手出来たのも有るそうです。

今回は以上です。詳細は下記画像をクリックして頂ければ大きな画像で見て頂く事ができます例会内容に興味が有る方や御質問、感想等頂ける方、些細な事でも結構ですのでコメントをお待ちしております。